*このエッセイは、ビッグウッド代表 大木 政春によるものです。
 「ビッグウッドのフードに対する想いやこだわり」をみなさんにお伝えできたら幸いです。




ドッグフード奮闘記
Vol.20 「受け取り方の大切さ」


研修は、学校の授業のように淡々と理論と経験をベースに進められました。
初心者の私は戸惑うばかりでした。
理解することも考える余地もないまま、『わからない人間はこの場にいる資格がない』とでもいわれているようにさえ思えるほど、容赦なく進んでいきました。

2日目、3日目と進むにつれ、理解できない自分への腹ただしさや、やるせなさが増し「何のためにここに居るのだろう・・・」と自分を見失いかけ、嫌気もさしてきていました。
おまけに宿泊していたのは屋外に置かれたトレーラーハウス。
真夏にもかかわらずクーラーなどもちろんなく、とにかく暑い。
網戸も所々破れていて、夜通し枕もとで蚊のかん高いキーという鳴き声が鳴り響くありさまで、体中刺され、痒くて眠ることもできません。暑さと痒みと、うるささで睡眠不足に悩まされました。

そして、授業では訳の解らない病気の専門用語の連発。
ハーブやホメオパシーという神秘的で迷信じみた薬草や体の電気エネルギーや周波数、おまけに量子力学までもが飛び交う、医学や専門の大学院レベルの知識でもなければとうてい理解できそうにない講義。
経験したことのないやるせなさでホームシックになるほど辛くて虚しい日々が続きました。

「・・・こんな所嫌だ!明日こそ日本に帰ろう」
眠れぬ夜をすごしながら、もっともらしい『帰る理由』探しに没頭していました。
そして、翌朝、今日こそハンナに日本に帰ることを伝えようと決心しました。
寝ないで考えた『仕事で急用ができた』という理由で。

決意して臨んだ4日目の朝礼では、ハンナの弟子から意外な発表がありました。
「本日は講義ではなくて恒例の個人面談と屋外実習です!」
受講生達から安堵感と期待の歓声があがりました。
何がなんだか解らない私もその場の雰囲気にのまれてしまったようです。
日本に帰ろう!と決意していたはずの私が、妙な安堵感と期待を感じてしまい、間抜けな状態で個人面談の順番を待っていました。

順番待ちの間、いままでほとんどコミュニケーションのなかった他の受講生たちと初めてじっくりと話す機会がもてました。
驚いたことに、皆、口をそろえて「理解できない、難しい、何を言っているかわからない」を連発したのです。
ほとんどの受講生はそれなりの知識レベルにあるので、理解できないのは自分だけと思い込んでいたのが大きな勘違いだったことを知りました。
私が初めての参加で医療関係の人間でないことを伝えると、アメリカ人医師からこういわれました。
「君は、なまじっか西洋医学を知らないから逆にいいんだよ」

・・・そうか、知らないということは知る良いチャンスなのだ!
理解するのではなく知ることが大切なのだ!
『このような世界や考え方や生き方が世の中にはあり、それはとても大切なことなのだ』ということを知るために私はここに来させていただいているのだ!
私は元気を取り戻すことができました。
そして、ハンナとの個人面談の順番がやってきて、その中では驚きと恐怖に思うことの連続でした。

Vol.21につづく)