*このエッセイは、ビッグウッド代表 大木 政春によるものです。
 「ビッグウッドのフードに対する想いやこだわり」をみなさんにお伝えできたら幸いです。




ドッグフード奮闘記
Vol.10 「理想のフードを作るための機械作り」


 黒田先生との出会いは、私のレシピ作りに大いなる進展をもらたしました。
膨大な研究資料と先生の経験があったために、それほどの時間を要した感も無く、想いが同じ者同志、レシピ作りは楽しく進んでいきました。
しかしこのフードそのもの(私達が研究室で連日連夜組み上げてきた理想のフード)を、いざ『日本中の愛犬や飼い主さんの所にもお届けしなければ』という使命ととらえたとき、現実問題にぶち当たってしまいました。
多くの愛犬の元へフードを届けるためには日持ちさせる手段が必要です。
しかし、その手段が無かったことに初めて気づかされたのです。
家庭の鍋レベルではでき得ても、流通させる商品にはならなかったのです。

黒田先生と共に探しに探し、調べに調べ、やっとたどり着いたのがレトルト食品でした。
そして、レトルト食品メーカーを何社も訪れました。
しかし、どのメーカーさんでも言われたことは同じでした。
「…大木さん、すみませんが、現在のレトルト食品製造技術は、カレーやスープといった、水分値が75%を超える食品にしか適用できないんですよ。
特にご飯についてはほとんど無理です。ご飯は全て無菌室を利用して、無菌包装でトレー容器に詰めたもの(現状出回っている『チンするご飯』)にするしかない。
それには何億円もの設備がかかるんです。だから大木さんの作りたがっている五目御飯はうちでは製造不可能です。」
つまり『五目御飯に似ているそのフードは最新のレトルト食品製造技術を駆使しても作れない』というのが結論でした。

私は、たとえ資金が底をつこうが、周りから変人と呼ばれようが、愛犬アトムへの想いを完結するために一心に進んできました。
大勢の人から暖かいものもたくさん頂きました。
旅の途中で愛犬への想いがいつしか使命感に変わり、『同じ想いを抱く全ての飼い主さんと全ての愛犬の健康のためにどこまでも進んで行こう』と決意も新たにしてきました。
しかし、この時はさすがに挫折感で目の前が真っ暗になり、虚しさを抑えることができませんでした。
これまでやってきたことがすべて否定され、無駄足と罵られているような気さえしました。

 もう、ここまででいい! 充分だ!
 亡きアトムも解ってくれるに違いない!
 アトムへの償いは出来たはず!

私は、自分に言い聞かせました。
黒田先生や共感してくれる多くの方々と約束した、『多くの愛犬達や飼い主さんのこと』までは自分には無理!
自分にはそこまでの力はなかったのだ…。


Vol.11につづく)